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Shusuke Inaba's Blog

檸檬

檸檬

山口県周防大島町家房で、行方不明の2歳児が3日後に発見された。
周防大島町といえば、瀬戸内海で淡路島、小豆島に次ぐ大きさの屋代島(周防大島)で、
金魚のような形なので、金魚島と呼ばれている。家房は、その金魚の腹のあたりだ。

発見者は大分からボランティアで駆けつけた78歳の男性で、
各地でボランティア活動をされているという。

この男性が人気者になっているようで、テレビ番組でインタビューされていた。

ヘルメットには励ますような言葉がマジックで書かれていて、
それは被災した方に口で伝えても受け取れないこともあるからだと言っていた。

自分の下着は着替えを1枚だけ。水も最小限。それで次は広島に2週間ボランティアに行くそうだ。
水が足りなければ小川の水を飲むという。現地でも調達出来そうだが、彼はただただ与えてくるのだろう。
ボランティアはさせていただいている、という気持ちでしているとのこと。

感動して聞いていたら、インタビュアーも泣きそうになっていた。

今日もありがとうございます。
どうかあなたに健康と幸福がありますように。


檸檬 梶井基次郎

 えたいの知れない不吉な塊が私の心を終始おさえつけていた。焦燥と言おうか、嫌悪と言おうか――――酒を飲んだあとにふつかよいがあるように、酒を毎日飲んでいるとふつかよいに相当した時期がやって来る。それが来たのだ。
 これはちょっといけなかった。結果した肺尖カタルや神経衰弱がいけないのではない。また背を焼くような借金などがいけないのではない。いけないのはその不吉な塊だ。
 以前私を喜ばせたどんな美しい音楽も、どんな美しい詩の一説も辛抱がならなくなった。蓄音器を聴かせてもらいにわざわざ出かけて行っても、最初の二、三小節で不意に立ち上がってしまいたくなる。何かが私をいたたまらずさせるのだ。それで終始私は街から街を浮浪し続けていた。
 なぜだかそのころ私は見すぼらしくて美しいものに強くひきつけられたのを覚えている。風景にしても壊れかかった街だとか、その街にしてもよそよそしい表通りよりもどこか親しみのある、汚い洗濯物が干してあったりがらくたが転がしてあったりむさくるしい部屋が覗いていたりする裏通りが好きであった。
 雨や風が蝕んでやがて土に帰ってしまう、と言ったような趣きのある街で、土塀が崩れていたり家並が傾きかかっていたり――――勢いのいいのは植物だけで、時とするとびっくりさせるようなひまわりがあったりカンナが咲いていたりする。
 ときどき私はそんな路を歩きながら、ふと、そこが京都ではなくて京都から何百里も離れた仙台とか長崎とか――――そのような市へいま自分が来ているのだ――――という錯覚を起こそうと努める。私は、できることなら京都から逃げ出して誰ひとり知らないような市へ行ってしまいたかった。

ここまでで10分。10分だけにしておきます。

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