MaydayArt

Shusuke Inaba's Blog

塵労

塵労

先日紹介したブログ、“神様より”にいいタイミングで
いい記事をUPしてくれていました。

理想の空間を創る4つの方法
https://ameblo.jp/sakurayuki3/entry-12398183561.html

笑顔、感謝、ポジティブ思考、そして愛。
これが大切だよ、ってね。

すぐに忘れて、思考に囚われてしまいます。で、体調崩すんです。
ここに書いてある通り、意識を頭ではなく、心に向けましょう。

天空に庭先で、祈りと瞑想というタイトルで、
祈り、内省、内観、瞑想、呼吸をまとめてくれています。

私たちのこの地上での使命は、
心を清めて愛を持って生き、心と霊と魂を磨き、いずれ神と一つになる事です。

このとてもおおきな目標を持って、生きようと思っています。
目先のことばかりでは、迷いも多く、塵労にくじけそうにもなります。
今はトロッコでいうと“行き”なのだと思って、腐らず、焦らず、ひとつひとつ。

行きに押す所が多ければ、帰りに又乗る所が多い ―――― by良平(トロッコより)

―――― この小説によく出てくる長い棒線の表示の仕方を知りました。
ダッシュを打てば出てきますので、それを何個か繋げます。
環境によっては、間が空いてしまうのかもしれないですね。

祈りと瞑想

今日もありがとうございます。
どうかあなたに健康と幸福がありますように。


トロッコ 3

 三人はトロッコを押しながらゆるい傾斜を登って行った。良平は車に手をかけていても、心はほかの事を考えていた。
 その坂を向うへ下り切ると、又同じような茶店があった。土工たちがその中へはいったあと、良平はトロッコに腰をかけながら、帰る事ばかり気にしていた。茶店の前には花のさいた梅に、西日の光が消えかかっている。「もう日が暮れる」ー彼はそう考えると、ぼんやり腰かけてもいられなかった。トロッコの車輪を蹴ってみたり、一人では動かないのを承知しながらうんうんそれを押してみたり、一そんな事に気もちを紛らわせていた。
 ところが土工たちは出て来ると、車の上の枕木に手をかけながら、無造作に彼にこう云った。
「われはもう帰んな。おれたちは今日は向う泊りだから」
「あんまり帰りが遅くなるとわれのうちでも心配するずら」
 良平は一瞬間あっけにとられた。もうかれこれ暗くなる事、去年の暮、母と岩村まで来たが、今日のみちはその三、四倍ある事、それを今からたった一人、歩いて帰らなければならない事、一そう云う事が一時にわかったのである。良平はほとんど泣きそうになった。が、泣いても仕方がないと思った。泣いている場合ではないとも思った。彼は若い二人の土工に、取って附けたようなおじぎをすると、どんどん線路伝いに走り出した。
 良平はしばらく無我夢中に線路の側を走り続けた。その内にふところの菓子包みが、邪魔になる事に気がついたから、それをみちばたへほり出すついでに、板草履もそこへ脱ぎ捨ててしまった。すると薄い足袋の裏へじかに小石が食いこんだが、足だけははるかに軽くなった。彼は左に海を感じながら、急なさかみちをかけ登った。時々涙がこみ上げて来ると、自然に顔がゆがんで来る。一それは無理に我慢しても、鼻だけは絶えずくうくう鳴った。
 竹藪のそばをかけ抜けると、夕焼けのした日金山の空も、もう日照りが消えかかっていた。良平は、いよいよ気が気でなかった。すると今度は着物までも、汗の濡れ通ったのが気になったから、やはり必死にかけ続けたなり、羽織をみちばたへ脱いで捨てた。
 蜜柑畑へ来る頃には、あたりは暗くなる一方だった。「命さえ助かれば一」良平はそう思いながら、すべってもつまずいても走って行った。
 やっと遠い夕闇の中に、村外れの工事場が見えた時、良平は一思いに泣きたくなった。しかしその時もべそはかいたが、とうとう泣かずにかけ続けた。
 彼の村へはいって見ると、もう両側の家々には、電灯の光がさし合っていた。良平はその電灯の光に、頭から汗の湯気が立つのが、彼自身にもはっきりわかった。井戸端の水をくんでいる女衆や、畑から帰って来る男衆は、良平が喘ぎ喘ぎ走るのを見ては、「おいどうしたね?」などと声をかけた。が、彼は無言のまま、雑貨屋だの床屋だの、明るい家の前を走り過ぎた。
 彼のうちのかどぐちへかけこんだ時、良平はとうとう大声に、わっと泣き出さずにいられなかった。その泣き声は彼のまわりへ、一時に父や母を集まらせた。ことに母は何とか云いながら、良平の体を抱えるようにした。が、良平は手足をもがきながら、すすり上げすすり上げ泣き続けた。その声があまり激しかったせいか、近所の女衆も三、四人、薄暗いかどぐちへ集まって来た。父母はもちろんお人たちは、口々に彼の泣くわけを尋ねた。しかし彼は何と云われても泣き立てるよりほかに仕方がなかった。あの遠いみちをかけ通して来た、今までの心細さをふり返ると、いくら大声に泣き続けて
も足りない気もちに迫られながら、・・・・・・・・・・
 良平は二十六の年、妻子といっしょに東京へ出て来た。今ではある雑誌社の二階に、校正の朱筆を握っている。が、彼はどうかすると、全然何の理由もないのに、その時の彼を思い出す事がある。全然何の理由もないのに?一塵労に疲れた彼の前には今でもやはりその時のように、薄暗い藪や坂のあるみちが、細々と一すじに断続している。

※塵労=世の中・俗世間における煩わしい苦労。

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